正面から男性にネックレスをつけられる、そんな行為自体慣れていないキョーコは、思わず、羞恥で顔を赤らめる。
「つ、敦賀さんっ!?」
「本当に君も、プリンセス・ローザ様も無事で何よりだよ……でも……」
そう言って、蓮はニッと口角だけを上げ笑い、徐々にキョーコを壁際に追い詰めていく。
そして、両腕を壁に突き出し、キョーコを囲うと、少し腰を落として視線を合わせた。
「……消毒はちゃんとしておかないとね?」
「ふぇえ?」
色気をだだ漏れにして始めた蓮はキョーコの顔へと自分の顔を近づける。
突然の接近に固まるキョーコと、外野をよそに、触れるか、触れないか、そんなギリギリの距離を保って、キョーコの頬から首筋をなぞるように移動し、そして、胸元のプリセンス・ローザに唇を落とした。
――チュッ。
そんなリップ音が聞こえてきそうなキス。
端から見れば、蓮がキョーコの胸に顔を埋めているようにしか見えない。
そんな危険な光景に、誰もが眩暈を覚えた。
「……ん、これで良し。最上さん、これからは大切なプリンセス・ローザ様を他人に触らせちゃダメだよ?」
――他人はお前もだろう!
引き攣った顔で様子を見ていた社と奏江の心の声はやはり蓮には届くわけもなく……。
唐突の蓮の行動に千織は目を白黒させて、思わず、奏江の腕に抱きついている。
「あ、えっ……あ、あの……」
「ん?」
「つ、敦賀さん!? 今、今、何を…………ッ!?」
「勿論、消毒だよ。さて、俺はそろそろ行かないと行けなくてね……もう少し、君と一緒にいたかったけど……残念だよ」
唖然と蓮を見上げるキョーコを愛おしそうに見つめた後、そっと振り返る。
「君たち、二人にね、依頼と言うよりお願いに近いんだけど断らないよね?」
「……え?」
「今後、全力で最上さんを傷つけようとする輩から守って欲しいんだ……彼女は……無防備だからね」
少し、哀しそうな笑みを浮かべて告げる蓮に、奏江と千織は目を丸くする。
「それじゃ、社さん、行きましょうか」
「あ、あ、そうだね! あのキョーコちゃんも、あとの二人も、お邪魔しました」
茫然自失のキョーコを痛ましげに社は見つめ、それから、同じように固まっている奏江と千織にも視線を向けた。
そして、心の中で両手を合わせる。
――本当にごめん………………蓮が。
パタンと音を立ててラブミー部の部室の扉が閉まると、キョーコはずるずると壁に沿って座り込んだ。
*:.。. .。.:*・゜゚・*☆
天音蓮華
2011.06.24 執筆
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